大雨の基礎知識(1) 大雨の発生メカニズム

大雨の基礎知識(1) 大雨の発生メカニズム 自然災害に備えるブログ Ready Japan 大雨
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この記事は下記の方にお勧めです。

・大雨の基礎を知りたい方
・大雨の種類と発生メカニズムを知りたい方

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はじめに

水は生命の源であり、水をもたらす雨はなくてはならないものと言えるのではないでしょうか。日照りの後に降る雨は恵みの雨とも言われ、待ち焦がれることもあるほどです。

一方、かつては「通り雨」や「夕立」といった風情の感じられる名前で呼ばれていたにわか雨はゲリラ豪雨と呼ばれるようになり、その激しさと凶暴さが増大していると感じている方は多いのではないでしょうか。また、線状降水帯という名前が付けられた集中豪雨は各地で大きな被害を発生させています。

この記事では雨が降るメカニズムと大雨の発生メカニズムについてまとめます。

雨は水の循環の要素

悩んでいる人
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雨はどうして降るのかなぁ?

水の循環

雨は下図に示すように地球規模での水の循環の一環で、1〜4を繰り返しています。

 1.太陽の熱で海や陸地から水が蒸発し水蒸気になる
 2.上空で水蒸気が冷やされてできた小さな氷の粒が集まり雲になる
 3.雲の中で氷の粒が大きくなり雨や雪となって地上に降る
 4.降った雨や雪は地下水となり、湧き出た地下水が川になって海に戻る

雲ができるメカニズム

もう少し詳しく見ていきましょう。下図は雲ができるメカニズムを表しています。水蒸気を含んだ空気の塊は上昇することにより気圧が低下して膨張し、温度が下がります。さらに上昇し露点に達すると水蒸気は小さな水滴もしくは氷の結晶になります。そして、これらが集まったものが雲です。

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雲の種類

空を見上げると日々雲の形が違うことに気がつくのではないでしょうか。雲の種類は10種類に分類されています。これらは位置によって上層、中層、下層に分けられます。なお、「巻」「高」は高さを、「層」「積」は形を、「乱」は雨を降らせることを表しています。

上層の雲には「巻雲」、「巻積雲」、「巻層雲」があり、それぞれ次のような特徴があります。
巻雲(すじ雲):最も高いところにある雲で、刷毛で掃いたような美しい筋が特徴です

巻積雲(うろこ雲、いわし雲):薄く小さな雲が魚のうろこのように連なった形状が特徴です

巻層雲(うす雲):ぼんやりと空全体に広がる薄い雲です

中層の雲には「高積雲」、「高層雲」、「乱層雲」があり、それぞれ次のような特徴があります。
高積雲(ひつじ雲):小さな塊状の雲が集まった形状が特徴です
           巻積雲に比べて雲片が大きく厚く、雲底に灰色の影ができます

高層雲(おぼろ雲):空一面に広がり、全天が濃淡のない薄灰色または乳白色の一色になります

乱層雲(雨雲):雨をもたらす雲の代表で、どんよりとした濃灰色の層状の分厚い雲が特徴です

低層の雲には「積乱雲」、「積雲」、「層雲」、「層積雲」があり、それぞれ次のような特徴があります。
積乱雲(入道雲):高さ12000mに達することもあるモクモクとした雲で夏によく発生します
          積乱雲の下では雷や激しい雨が降っています

積雲(綿雲):晴れた日によく見られるふわふわとした見た目の雲です

層雲(霧雲):最も地表近くに発生する灰色で層状の雲。雲海の原因のひとつです

層積雲(くもり雲):曇り空を代表する雲で積雲よりひとつひとつの雲片が小さく密集して
           います。隙間から青空がのぞくこともあります

以上の10種類の雲の内、雨を降らす雲は乱層雲と積乱雲で、積乱雲が大雨の原因になります。

雨が降るメカニズム

雲は小さな水滴や氷でできていることを先に書きましたが、これらは小さいままだと上昇気流のために地上へは落ちてきません。しかし、これらが合体することにより成長すると落下します。地上に到達するときに溶けていると雨で、凍ったままだと雪になります。

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大雨の発生メカニズム

悩んでいる人
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雨の降り方は色々だけど、どうしてなんだろう?

雨の強さの分類

気象庁では下表のように1時間雨量により雨の強さを「やや強い雨」、「強い雨」、「激しい雨」、「非常に激しい雨」、「猛烈な雨」に分類しています。1時間雨量は20mm以上の雨になると傘をさしていても濡れ、50mm以上になると傘が役立たず、車の運転が危険になるような降り方です。

1時間雨量 (mm)予報用語人の受けるイメージ人への影響車に乗っていて
10以上~ 20未満やや強い雨ザーザーと降る地面からの跳ね返りで足元が濡れる
雨_人への影響。傘を差しても足元が濡れてしまう状況。

20以上~ 30未満強い雨どしゃ降り傘をさしていても濡れる
雨_人への影響。傘をさしていても濡れてしまう状況。
ワイパーを速くしても見づらい
雨_車に乗っていて。運転しにくい状況。
30以上~ 50未満激しい雨バケツをひっくり返したように降る高速走行時、車輪と路面の間に水膜が生じブレーキが効かなくなる(ハイドロプレーニング現象)
雨_車に乗っていて。運転が困難な状況。
50以上~ 80未満非常に 激しい雨滝のように降る(ゴーゴーと降り続く)傘は全く役に立たなくなる
雨_人への影響。傘が役に立たない状況。
車の運転は危険
雨_車に乗っていて。運転ができない状況。
80以上~猛烈な雨息苦しくなるような圧迫感がある。恐怖を感ずる
気象庁の資料から一部を抜粋し加工(https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/amehyo.html)

大雨の種類

大雨には集中豪雨ゲリラ豪雨(局地的大雨)があり、それぞれの発生メカニズムが異なります。

集中豪雨

集中豪雨は短時間のうちに狭い地域に集中して大量の雨が降ることを言います。台風や梅雨前線の停滞で発生することが多く、狭い地域に限定して発生するため、その予測は大変難しいと言われています。また、2014年の広島県での集中豪雨から「線状降水帯」が注目を集めており、最近では天気予報などでもよく使われるようになりました。気象庁では線状降水帯を下記のように定義づけています。

次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)が列をなした、組織化した積乱雲群によって、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで作り出される、線状に伸びる長さ50~300km程度、幅20~50km程度の強い降水をともなう雨域。
(出典:気象庁『雨に関する用語』 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/kousui.html)

さらに2021年から「線状降水帯」というキーワードを使って解説する「顕著な大雨に関する気象情報」を発表しています。

現在、10分先、20分先、30分先のいずれかにおいて、以下の基準をすべて満たす場合に発表。

 1.前3時間積算降水量(5kmメッシュ)が100mm以上の分布域の面積が500km2以上
 2.1.の形状が線状(長軸・短軸比2.5以上)
 3.1.の領域内の前3時間積算降水量最大値が150mm以上
 4.1.の領域内の土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)において土砂災害警戒情報の基準を超過(かつ大雨特別警報の土壌雨量指数基準値への到達割合8割以上)又は洪水キキクル(洪水警報の危険度分布)において警報基準を大きく超過した基準を超過
(出典:気象庁『雨に関する用語』 https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/yougo_hp/kousui.html)

下図左のイラストは線状降水帯の例で広島での集中豪雨の時の様子です。赤い部分で大雨になっており、その形状から線状降水帯とされました。また、右のイラストは線状降水帯発生メカニズムの模式図で、次々と発生する積乱雲により線状の強い降水域ができます。

集中豪雨は重大な土砂災害や家屋浸水等の災害を引き起こすため、警戒が必要です。

ゲリラ豪雨(局地的大雨)

局地的大雨は、急に強く降り、数十分の短時間に狭い範囲に数十mm程度の雨量をもたらす雨のことを言い、20〜30km四方の広さに点在する大雨です。急な強い雨のため河川や水路等が短時間に増水するため、重大な事故を引き起こすことがあります。例えば、2008年7月28日に神戸市灘区で発生した都賀川水難事故では急激な水位上昇で16人が濁流に流され、5人が死亡しました。

ゲリラ豪雨は都市部での発生が多いことからヒートアイランド現象と関係があるとも言われています。アスファルトに覆われた地面は太陽光を吸収しやすいのでより多くの熱を発し、また、空調や自動車からの排熱も多く、上空との温度差がより大きくなるため積乱雲が発達しやすいからです。ゲリラ豪雨はある意味人災なのかもしれません。

悩んでいる人
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夕立とゲリラ豪雨は雨の降り方が似てるけど同じなのかなぁ?

「夕立」は気象用語で「ゲリラ豪雨」は気象用語ではないという違いがあります。つまり、ゲリラ豪雨は慣例的に使われている用語です。
また、夕立は夏の午後に降るにわか雨なのに対し、ゲリラ豪雨は降る時間帯が決まっていません。これは、夕立が夏の日差しで地面が暖められて積乱雲が発達することにより雨が降るのに対し、ゲリラ豪雨は夏の日差しに加えて都市部のヒートアイランド現象が関係しているからと言われています。
夕立は風情を感じられる用語で夏の午後の暑さを和らげる恵みの雨にもなりますが、ゲリラ豪雨はその名称からして災害に近いのかもしれません。

積乱雲には気をつけよう

線状降水帯やゲリラ豪雨は積乱雲によるものであることがわかりました。積乱雲は地上付近の空気が暖かく湿っている時や、上空に寒気が流れ込んで大気が不安定になったときに発生します。つまり、地上付近の暖かく湿った空気が上昇し、水蒸気が凝結することによって積乱雲として成長し、小さかった雨粒が大きくなることによって雨として降り注ぎます。

一方、積乱雲の寿命は1時間程度で、雨が降るのはその半分程度の時間と言われています。それでは何故集中豪雨になるのでしょうか?

それは、前線付近で冷たい空気の上に温かい空気が流れ込んだり、山沿いの平地で風が山のほうに噴き上げたりすると積乱雲が次々と発生し、雨が降り続けることになるからです。例えば、令和5年の台風6号や7号では台風の速度が遅かったこともあり線状降水帯が発生し被害が出ました。

積乱雲を見たら大雨に備える必要があります。

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まとめ

この記事をまとめます。

  • 雨は地球規模の水の循環で大切な役目を果たしています
  • 雲の種類は10種類で、雨を降らす雲は乱層雲と積乱雲で、積乱雲が大雨をもたらします
  • 大雨は「強い雨」、「強い雨」、「激しい雨」、「非常に激しい雨」、「猛烈な雨」に分類されています
  • 大雨には集中豪雨と局地的大雨(ゲリラ豪雨)があり、いずれも積乱雲が関係しています
  • 線状降水帯による集中豪雨は積乱雲が次々と発生することにより発生します

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