この記事は下記の方にお勧めです。
・津波警報や注意報に関して知りたい方
・津波の被害について知りたい方
・津波が発生した時の避難について知りたい方
津波警報と注意報
津波情報の発表の流れ
地震が発生後、津波による災害のおそれの有無に津波の有無に応じて津波情報が気象庁から発表されます。下記は津波による災害の恐れがある場合の発表の流れで、テレビの速報で見た経験がある方は多いのではないでしょうか。
①緊急地震速報(警報)
地震発生後数秒か十数秒後に強い揺れが予想される地域に発表
②震度速報
地震発生約1分後に、震度3以上を観測した地域名と地震の揺れの発現時刻を発表
③津波警報・注意報
地震発生後 3 分程度で津波注意報、津波警報を発表
④津波到達予想時刻・予想される津波の高さに関する情報
地震発生後 3 分から 4 分で発表。各津波予報区の津波の到達予測時刻や予想される津波の
高さをメートル単位で発表
⑤各地の満潮時刻・津波到達予想時刻に関する情報
地震発生後 3 分から 4 分で発表。地点毎の津波到達予想時間と満潮時刻を発表
⑥震源・震度に関する情報
地震発生後 5 分程度で発表。震源、地震の規模、大きな揺れが観測された地域名及び市町
村名等を発表
⑦各地の震度に関する情報
地震発生後 5 分程度で発表。震度1以上の地点名、震源、地震の規模を発表。
⑧津波観測に関する情報
津波の観測状況(実況)を発表
出典:石垣島地方気象台資料「地震・津波情報の流れ・見方」(https://www.jma-net.go.jp/ishigaki/bosai/tmanual/pdf/m13.pdf)。一部加工
また、津波による被害の恐れがない場合は次のような流れになります。
①緊急地震速報(警報)
地震発生後数秒か十数秒後に強い揺れが予想される地域に発表
②震度速報
地震発生約1分後に、震度3以上を観測した地域名と地震の揺れの発現時刻を発表
③震源に関する情報
地震発生後 2 分から 5 分で発表。明らかに津波がない場合や「海面変動あり」と、速やかに判明した場合のみ発表し、震源の位置、地震の規模の発表と、津波のおそれがない場合にその旨を付加する
④震源・震度に関する情報
地震発生後 5 分程度で発表。震源、地震の規模、大きな揺れが観測された地域名及び市町
村名の発表と、津波のおそれがない場合にその旨を付加する。
⑤各地の満潮時刻・津波到達予想時刻に関する情報
地震発生後 5 分程度で発表。震度1以上の地点名、震源、地震の規模の発表と、津波のおそ
れはない旨等を付加する。
⑥津波予報
発表条件
1.0.2メートル未満の海面変動が予想されたとき
2.津波注意報解除後も海面変動が継続する場合
3.津波が予想されない場合。なお、津波がない時は地震情報(震源に関する情報や震源・震度に関する情報)の中で発表。
出典:石垣島地方気象台資料「地震・津波情報の流れ・見方」(https://www.jma-net.go.jp/ishigaki/bosai/tmanual/pdf/m13.pdf)。一部加工
このように、地震が発生したときには地震の情報のみならず津波の情報も併せて発表することにより、津波のおそれがあるときには避難の勧告をし、津波のおそれがないときには安心させる効果があると言えるのではないでしょうか。
2023年10月9日に発生した津波では、八丈島に第一波が到達後に津波注意報が発表されました。鳥島付近で発生した地震が原因と考えられているものの、この地震で震度1を観測して地点はなく、マグニチュードも不明だったため、地震発生直後には津波注意報が発表されませんでした。幸いなことに大きな被害はありませんでしたが、観測技術が発達しても津波の予知を確実にできないことがあるという一つの事例になりました。
地震の規模と津波警報
地震の大きさによって発表される津波警報の情報が異なります。つまり、M8(マグニチュード8)を超える巨大地震の時には「言葉」で、それ以下の地震の時には「数値」での発表になります。M8を超える地震の時に具体的な数値での発表にならないのは、気象庁が発表するマグニチュードは「気象庁マグニチュード」と呼ばれるもので、M8以上の巨大地震では小さな数値になるからです。また、モーメントマグニチュードの方が巨大地震でもより精確な数値になりますが、気象庁マグニチュードよりも算出に時間がかかります。津波の場合、速報性が避難のために不可欠なため、第一報ではより早く発表できる気象庁マグニチュードの情報を元にした警報の発表としているのでしょう。
「気象庁マグニチュード」と「モーメントマグニチュード」に関しては、下記の記事を参照してください。
警報・注意報の種類と津波の高さ
津波の高さと警報や注意報の関係はどうなっているのかなぁ
津波に関する警報・注意報は「大津波警報」、「津波警報」、「津波注意報」の3種類です。大津波警報は高さ3メートル以上の津波で、東日本大震災級の津波が来る恐れがあり、発表されたら直ちに高所へ避難する必要があります。津波警報は1〜3メートルの津波の恐れがあり、大津波警報と同じく直ちに避難をする必要があります。津波注意報は20cm〜1メートルの津波の恐れがあり、海岸からすぐに高所へ離れる必要があります。
下表は警報・注意報の種類とそれぞれでの津波の高さ、とるべき行動、想定される被害をまとめた表です。もし、巨大地震の時に予想される津波の高さが「巨大」と発表されたら、直ちに高所へ避難しなくてはなりません。
津波による被害
津波による被害の概略
東日本大震災による巨大津波では多くの人々の溺死、家屋の流出、原子力発電所の破壊のほか、津波が襲った地域ではありとあらゆるものが被害を受けました。下表は考えられる津波被害をまとめたものです。
対象 | 被害形態 | 原因 |
---|---|---|
人的被害 | 溺死、怪我、病気等 | 無防備、避難遅れ |
家屋被害 | 流出、破壊、浸水、家具等 | 波力、漂流物衝突 |
防災構造物被害 | 破壊、倒壊、変位 | 洗掘 |
防災構造物被害 | 鉄道、道路、橋、港湾の機能障害 | 施設破損、漂流、堆積物 |
ライフライン被害 | 水道、電力、通信、下水道機能障害 | 施設破損、浸水 |
水産業被害 | 養殖筏、漁船、漁網流出・破壊 | 波力、漂流物衝突 |
商工業被害 | 製品や商品価値の損失 | 浸水、破損 |
農業被害 | 作物被害、農地・用水路埋没 | 海水浸水、流入堆土砂 |
森林被害 | 幹折れ等の破損、塩害 | 波力、海水 |
火事 | 家屋、漁船、石油タンク等の出火 | 漂流物衝突、漏電 |
石油流出 | 石油タンク等の破損、環境汚染 | 漂流物衝突 |
地形変化 | 河川や港の堆砂、砂浜変形 | 波力、土砂移動 |
発電所 | 建物・施設の破壊、取水・放水の困難 | 波力、水位低下 |
出典:東海・東南海・南海地震津波研究会「よくわかる津波ハンドブック」
津波による人的被害
それでは、どのくらいの高さの津波が来たら人に対して危険なのでしょうか? 気象庁では20cmから30cmの津波でも人が速い流れに巻き込まれてしまうおそれがあるため大変危険としています。そのため、20cm以上の津波の恐れがあるときに津波注意報を発表します。20cmと言えば浅瀬程度ですが、もしも海岸近くにいる時に津波注意報が発表されたら、油断することなく避難しなくてはなりません。
津波による建造物等への被害
下表は津波波高による建造物等への被害程度をまとめたものです。木造家屋では浸水2メートルで、石造家屋では浸水4メートル弱で全面破壊します。また、浸水が0.5メートル程度でも船舶や木材などの漂流物の直撃によって被害が出る場合があります。
津波は繰り返し襲ってくる
津波は第一波だけではなく、第二波、第三波と繰り返し襲ってきます。また、第一波が必ずしも最大というわけではなく、後から襲ってくる津波の方が大きいこともあります。その例として下図に示す2010年2月のチリ地震があり、第一波よりも後から襲った波の方が波高が大きくなりました。例えば、根室市花咲と久慈港では第一波では30センチの津波だったのが最大波では1.2メートルでした。また、場所によっては第一波と最大波の到達時間に約6時間の差がありました。
このように第一波の規模が小さかったからといって油断することなく津波警報や注意報が解除されるまで避難し続けることが肝要です。
津波からの避難
直ちに高いところに避難する
津波からの避難は津波警報が発表されている時には「直ちに高台や避難ビルなど安全な場所に避難する」、注意報が発表されている時には「海の中にいる人は直ちに海から上がって海岸から離れる」ことです。水平なところを遠くへ逃げても意味がありません。これは、津波の沿岸近くでも速度が下図のように時速36kmと自動車並みの速度で、徒歩や自転車では逃げきれないからです。
津波避難場所や津波避難ビルの標識を確認する
沿岸部を訪れたときに、上図に示す津波避難場所、津波避難ビル、津波注意の標識を見かけたことがある方は多いのではないでしょうか。これらの標識があるところは、津波の危険性がある場所です。
実際には、下の写真のように方向と施設の名称が記載されていたり、津波避タワーに掲示されていたりします。もしもの時に備えて、沿岸部を訪れた時には安全な場所がどこにあるのかを確認しましょう。
津波避難ビルは上の写真の津波避難タワーのように自治体が建設しているものに加えて、避難のために緊急的・一時的に利用する民間等の建物も指定されています。その例として、マンション、ホテル、魚市場の屋上などがあります。さらに、人工の山を作って避難場所とした「津波避難山」もあります。下の写真の場合、最短距離で登ることはできる階段に加えて、緩やかなスロープのあり、車椅子の帰途でも避難できるようになっています。
警報・注意報が解除されるまで避難し続ける
先述のように、津波は繰り返し襲ってきます。また、第一波が最大波とは限りません。津波警報や注意報が解除される前は帰宅等をするのではなく、避難し続けることが肝要です。
まとめ
この記事をまとめます。
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