この記事は下記の方にお勧めです。
・震度とマグニチュードの違いを知りたい方
・震度がどのように決められているのかを知りたい方
はじめに
地震が発生するとテレビで地震速報として各地の震度や震源地、マグニチュードなどがテロップで出てくるのを見たことがある方は多いのではないでしょうか。また、地震の規模が大きいときには、通常のテレビ番組を中断して、地震情報の番組になることもあります。
日本では被害の大きさを推測するために「震度」が重要な役目を果たしていますが、「マグニチュード」と何が違うのでしょうか? また、震度はどのように決められているのでしょうか?
この記事では地震の大きさに関連する震度やマグニチュードについてまとめます。
地震の大きさの表し方
地震のニュースで「震度5弱」とか「マグニチュード5.5」とかふたつの数字が出てくるけど、何が違うのかなぁ
地震発生に関するニュースで「震度」と「マグニチュード」という用語が必ずといって良いほど出てきますが、それぞれの意味は必ずしも正確に理解されていないのではないでしょうか。
震度はある場所における地震の揺れの強弱の程度を表す尺度で、同じ地震でも場所によって震度は異なります。このことは地震速報等で震度毎にいくつかの自治体名が発表されることからもわかります。
一方、マグニチュードは地震そのものの大きさ(エネルギー)を表します。したがって、ひとつの地震に対するマグニチュードはひとつだけです。
そのため、震度の大きさとマグニチュードの大きさは必ずしも比例しません。例えば、阪神・淡路大震災のマグニチュードは7.3で東日本大震災のマグニチュードの9.0よりも小さかったのにも関わらず大きな被害が発生しました。これは、阪神・淡路大震災の震源が淡路島北部の直下で、深さが16kmと浅かったことが要因です。なお、東日本大震災の震源は三陸沖の牡鹿半島の東南東130km付近で、深さ約24kmと陸地から遠いところでした。つまり、下図のようにマグニチュードが小さな地震でも震源地が近ければ大きな揺れ(震度大)になり、マグニチュードが大きな地震でも距離が遠ければ小さな揺れ(震度小)になります。
2015年5月30日の小笠原諸島西方沖地震はマグニチュード8.1の大きな地震でしたが、震源の深さが681kmと深かったこともあり最大震度5強でした。
震度(日本)
震度はどうやって決めているのかなぁ
日本で使用されている震度は日本独自の基準で気象庁が決定しています。阪神・淡路大震災までは震度を決めるために気象庁の職員が体感や建物被害を歩いて調査することにより判定していましたが、1996年4月以降は計測震度計で自動的に観測された計測震度が使用されるようになり、現在に至っています。
旧震度階
下表は1949年~1996年まで使用されていた震度階です。震度階は0〜7の8階級で、人体感覚や建物被害を気象庁の職員が現地調査することにより決定していました。そのため、職員がいる気象台や測候所などでしか震度は観測できず、それ以外の場所では後から現地で調査を行い、被害状況や聞き取りなどを行って震度を推定していました。
震度階 | 人体感覚・建物被害 |
0:無感 | 人体に感じないで地震計に記録される程度 |
Ⅰ:微震 | 静止している人や、特に地震に注意深い人だけに感ずる程度の地震 |
Ⅱ:軽震 | 大勢の人に感ずる程度のもので、戸障子がわずかに動くのがわかるぐらいの地震 |
Ⅲ:弱震 | 家屋が揺れ、戸障子がガタガタと鳴動し、電灯のようなつり下げ物は相当揺れ、 器内の水面の動くのがわかる程度の地震 |
Ⅳ:中震 | 家屋の動揺が激しく、座りの悪い花瓶などは倒れ、器内の水はあふれ出る。 また、歩いている人にも感じられ、多くの人々は戸外に飛び出す程度の地震 |
Ⅴ:強震 | 壁に割れ目が入り、墓石・石灯ろうが倒れたり、煙突・石垣などが破損する程度の地震 |
Ⅵ:烈震 | 家屋の倒壊は 30 パーセント以下で、山崩れが起き、地割れを生じ、 多くの人々が立っていることができない程度の地震 |
Ⅶ:激震 | 家屋の倒壊が 30 パーセント以上に及び、山崩れ、地割れ、断層などを生じる |
現行の震度階
1996年に震度階が改訂され、人体感覚や建物被害の観察による震度決定から、計測震度計による測定に変わりました。また、旧震度階の8階級から10階級に増えました。増えたのは旧震度5と震度6で、それぞれ震度5弱と5強、震度6弱と6強に細分化されています。さらに、強震や烈震といった名称が廃止されました。下表は現行の震度階の一覧表です。
震度 階級 | 人の体感・行動 | 屋内の状況 | 屋外の状況 | 震度と揺れ等の状況 |
0 | 人は揺れを感じないが、地震計には記録される。 | – | – | |
1 | 屋内で静かにしている人の中には、揺れをわずかに感じる人がいる。 | – | – | |
2 | 屋内で静かにしている人の大半が、揺れを感じる。 眠っている人の中には、目を覚ます人もいる。 | 電灯などのつり下げ物が、わずかに揺れる。 | – | |
3 | 屋内にいる人のほとんどが、揺れを感じる。 歩いている人の中には、揺れを感じる人もいる。眠っている人の大半が、目を覚ます。 | 棚にある食器類が音を立てることがある。 | 電線が少し揺れる。 | |
4 | ほとんどの人が驚く。 歩いている人のほとんどが、揺れを感じる。 眠っている人のほとんどが、目を覚ます。 | 電灯などのつり下げ物は大きく揺れ、棚にある食器類は音を立てる。 座りの悪い置物が、倒れることがある。 | 電線が大きく揺れる。 自動車を運転していて、揺れに気付く人がいる。 | |
5弱 | 大半の人が、恐怖を覚え、物につかまりたいと感じる。 | 電灯などのつり下げ物は激しく揺れ、棚にある食器類、書棚の本が落ちることがある。 座りの悪い置物の大半が倒れる。 固定していない家具が移動することがあり、不安定なものは倒れることがある。 | まれに窓ガラスが割れて落ちることがある。 電柱が揺れるのがわかる。 道路に被害が生じることがある。 | |
5強 | 大半の人が、物につかまらないと歩くことが難しいなど、行動に支障を感じる。 | 棚にある食器類や書棚の本で、落ちるものが多くなる。 テレビが台から落ちることがある。 固定していない家具が倒れることがある。 | 窓ガラスが割れて落ちることがある。 補強されていないブロック塀が崩れることがある。 据付けが不十分な自動販売機が倒れることがある。 自動車の運転が困難となり、停止する車もある。 | |
6弱 | 立っていることが困難になる。 | 固定していない家具の大半が移動し、倒れるものもある。 ドアが開かなくなることがある。 | 壁のタイルや窓ガラスが破損、落下することがある。 | |
6強 | 立っていることができず、はわないと動くことができない。 揺れにほんろうされ、動くこともできず、飛ばされることもある。 | 固定していない家具のほとんどが移動し、倒れるものが多くなる。 | 壁のタイルや窓ガラスが破損、落下する建物が多くなる。 補強されていないブロック塀のほとんどが崩れる。 | |
7 | 立っていることができず、はわないと動くことができない。 揺れにほんろうされ、動くこともできず、飛ばされることもある。 | 固定していない家具のほとんどが移動したり倒れたりし、飛ぶこともある。 | 壁のタイルや窓ガラスが破損、落下する建物がさらに多くなる。 補強されているブロック塀も破損するものがある。 |
下表は計測震度と新旧震度階との関係を表しています。この表から明らかなように震度7以上の震度階級は存在しません。したがって、日本では震度8や震度10の地震はあり得ません。ただし、別記事のように外国では制度が異なり、震度8以上の地震も存在します。
震度階級 | 計測震度 | 旧震度階級 | 旧計測震度 | 旧呼称 |
---|---|---|---|---|
0 | 0.5 未満 | 0 | 0.5 未満 | 無 感 |
1 | 0.5 以上 1.5 未満 | Ⅰ | 0.5 以上 1.5 未満 | 微 震 |
2 | 1.5 以上 2.5 未満 | Ⅱ | 1.5 以上 2.5 未満 | 軽 震 |
3 | 2.5 以上 3.5 未満 | Ⅲ | 2.5 以上 3.5 未満 | 弱 震 |
4 | 3.5 以上 4.5 未満 | Ⅳ | 3.5 以上 4.5 未満 | 中 震 |
5 弱 | 4.5 以上 5.0 未満 | Ⅴ | 4.5 以上 5.5 未満 | 強 震 |
5 強 | 5.0 以上 5.5 未満 | |||
6 弱 | 5.5 以上 6.0 未満 | Ⅵ | 5.5 以上 6.5 未満 | 烈 震 |
6 強 | 6.0 以上 6.5 未満 | |||
7 | 6.5 以上 | Ⅶ | 6.5 以上 | 激 震 |
地震の観測
気象庁が発表する震度は、気象庁、地方公共団体及び国立研究開発法人防災科学技術研究所が全国各地に設置した震度観測点で観測した震度です。計測されたデータは地上回線や気象衛星を通じて気象庁に送られます。
気象台が発表する震度はあくまでも計測震度計を設置している場所での震度です。居住地の震度を知りたいときには同じ市町村もしくは隣接の市町村の震度を参照することが多いですが、計測震度計が設置している場所と居住地の震度はたとえ同じ市内であっても地盤の揺れやすさの差により必ずしも同じではなく、震度階級1程度の差があると言われています。
震度の算出方法
計測震度計では3成分(水平動2成分、上下動1成分)の加速度を測定し、このデータを下記のように計算することにより震度を算出しています。詳しくは気象庁のホームページを参照してください。
- ディジタル加速度記録3成分(水平動2成分、上下動1成分)のそれぞれの フーリエ変換を求める。
- 地震波の周期による影響を補正するフィルターを掛ける。
- 逆フーリエ変換を行い、時刻歴の波形にもどす。
- 得られたフィルター処理済みの3成分の波形をベクトル的に合成をする。
- ベクトル波形の絶対値がある値 a 以上となる時間の合計を計算したとき、これがちょうど 0.3秒となるような a を求める。
- 5.で求めた a を、I = 2 log a + 0.94 により計測震度 I を計算する。計算された I の小数第3位を四捨五入し、小数第2位を切り捨てたものを計測震度とする。
加速度と震度の関係
計測震度計では加速度を測定し、加速度のデータを色々と計算することにより震度を算出していることを先述しました。感覚的には加速度が大きいほど震度階も大きくなりそうですが、実際には加速度の大きさと震度階は必ずしも比例しません。
例えば、2003年5月26日の宮城県沖の地震では、大船渡市の計測震度計で 東西方向に1,105.5Galという非常に大きな加速度を記録したにも関わらず、計測震度は6弱で大きな被害はありませんでした。それに対し、1995年1月17日の阪神・淡路大震災では、神戸市中央区での最大加速度は818.0Gal(南北方向)、 震度は6(現在の算出方法では6強)で大きな被害が発生しました。これは、下図のように大船渡の地震では加速度は大きいものの短い周期の揺れだったのに対し、神戸の地震では建物の損傷を与えやすい長周期の揺れだったからです。つまり、加速度の大きさだけではなく揺れの周期や継続時間も重要な要素で、震度階の算出にはこれらも加味されています。
下図は均一な揺れが数秒間続くと仮定した時、地震波の周期、加速度と震度との関係を表したものです。例えば、震度7の下限に相当する計測震度6.5以上になるためには、 3成分の合成値で約600Gal以上の加速度が必要ですが、これが周期0.1秒の波では2,700Gal以上になることがわかります。
Gal(ガル)は地震の揺れの強さを表すのに用いる加速度の単位で、1Gal=1cm/s2 です。
某家具の転倒防止グッズの会社に耐震試験の条件について問い合わせたときに「650Galの加速度で試験をしているので震度7です。」との回答を得ましたが、揺れの周期によっては震度7にならないことは上のグラフから明らかです。耐震試験の条件を問い合わせるときには最大加速度と周期の両方を問い合わせるのが良いでしょう。
まとめ
この記事をまとめます。
※この記事は下記のサイトを参考に作成しました。
・気象庁のホームページ
このテーマは「地震の基礎知識(3) 地震の大きさ Part 2」に続きます。
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