この記事は下記の方にお勧めです。
・津波の基礎を知りたい方
・津波のメカニズムを知りたい方
・津波と波浪や高潮との違いを知りたい方
津波とは
はじめに
東日本大震災で発生した津波はこの先も日本人が忘れることのない自然災害のひとつではないでしょうか。また、近く発生すると言われている南海トラフ巨大地震によって引き起こされる津波は東日本大震災による津波よりもさらに大きな被害をもたらすと言われています。この記事では津波の基礎についてまとめます。
TSUNAMIは世界共通語
津波は船着場や港を意味する「津」を襲う波が語源と言われています。また、「TSUNAMI」は世界共通語になっており、下の写真のように標識にも記載されています。
津波を意味するもともとの英語は「Tidal Wave」なのですが、1946年にアリューシャン列島で発生した地震により発生した大津波がハワイを襲った時にハワイ在住の日系人が「Tsunami」と称したことから広まったと言われています。
津波発生の情報発信
津波が発生する恐れがある時には、従来からのテレビやラジオ、サイレン、鐘などの方法に加えて携帯電話の緊急速報メールで情報が発信されます。
さらに、令和2年6月から海水浴場などで津波フラッグにより視覚的に知らせる方法が追加されました。下図は大津波警報、津波警報、津波注意報が発表されたことを知らせする津波フラッグです。もしも海岸でこの旗を見かけた時にはすぐに高いところに逃げなければなりません。
津波の原因
多くの場合、津波は海底での地震により発生します。また、海底火山の噴火や、島嶼部の火山の山体崩壊でも津波が発生します。さらに、海外の火山噴火の気圧波に伴う津波もあり、例えば、2022年のトンガの海底火山(フンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ)の噴火により地球規模で伝播する津波が発生しました。
津波のメカニズム
地震や火山噴火でどうして津波が発生するのだろう?
海底地震による津波の発生メカニズム
地震は地殻を構成しているプレートの移動により発生します。地震が発生する場所により、海溝型地震、プレート内地震、内陸型地震があるのですが、津波が発生する地震の多くは海溝型地震です。それぞれの地震に発生メカニズムに関しては下記の記事を参照してください。
それでは、海溝型地震によりどうして津波が発生するのでしょうか?
下図の上のイラストはプレートの移動により陸側のプレートに歪みが蓄積されているイメージ図です。陸側のプレートが黄色の矢印の方向にゆっくりと屈曲していきますが、この時点では地震は発生していません。
真ん中のイラストは陸側のプレートの屈曲が限界に達し、蓄積した歪みを解放するために跳ね上がったところのイメージ図です。この陸側のプレートの跳ね上がりにより海水が押し上げられます。
下のイラストのように押し上げられた海水が伝播し、津波となって陸地へと襲いかかることになります。
震源地から陸地までの津波の伝わり方のメカニズムに関しては後程解説します。
地震の発生場所によっては津波警報等が間に合わないこともあるので、海岸沿いで強い揺れを感じたらすぐに高所へ避難することが何よりも大切です。
海溝型地震による津波の代表例は東日本大震災での津波です。
海底火山の噴火による津波の発生メカニズム
海底火山の噴火により海水が押し上げられて津波が発生します。近年では2021年の福徳岡ノ場(硫黄島の南方約60km)の火山活動により微弱な津波が発生しました。この火山活動では大量の軽石が発生し、各地に流れ着いて被害が出たことがニュースになりました。
山体崩壊による津波の発生メカニズム
島嶼部の火山活動により山体崩壊することによっても津波が発生します。下図はそのイメージ図で大量の土砂が海中に流れ込むことで津波となります。
山体崩壊による津波の代表例は1792年の雲仙岳眉山(長崎県)の噴火によるもので、土砂が島原から有明海に落ちることにより大津波が発生し、15000人もの死者が出ました。この噴火は「島原大変肥後迷惑」と呼ばれています。
また、火山活動により海底で地滑りが起きることによっても津波が発生します。下図はそのイメージ図です。
海底での地滑りによる津波の代表例は1741年の渡島大島(北海道)の噴火によるもので、津波が北海道や津軽半島を襲い、多くの犠牲者が出ました。
火山噴火の気圧波に伴う津波の発生メカニズム
2022年のフンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山(トンガ)の噴火で、計算による当初の予測よりも早期に、また、予測よりも大きな津波が日本に到達しました(奄美大島で1.2メートル)。これは噴火により引き起こされた津波が山体崩壊や海底地滑りによるものではなく、気圧波(ラム波)によるものだったからです。
下図は大規模な噴火による津波発生のイメージ図です。この津波は揺れを伴わない津波で、噴火の衝撃波による空気の振動によるものでした。この自然現象は例のないもので、そのために当初の予測(山体崩壊や海底地滑りで計算)が外れたと言われています。
津波の伝わり方のメカニズム
海溝型地震より発生する津波は震源近くと沿岸とでは様相が異なります。下図のように震源近くの外洋での波高が数m程度で速度が700km/hであるのに対し、近海になり海が浅くなると波高がより高くなり、速度は遅くなります(例えば、水深500mで250km/h)。そして沿岸に到達すると波高はさらに高くなり、速度はより遅くなります(海岸近くでは36km/h)。遅いと言っても人の走る速さよりもはるかに速いため、津波を見てから逃げるのでは間に合わないことが明らかです。
沿岸に到達した津波は海岸線での津波高の2倍の標高まで、地形によっては4倍程度の標高まで駆け上ることがあります。
さらに、津波は複数回押し寄せることもあるので、津波警報が解除されるまで避難している必要があります。
津波と波浪と高潮の違い
天気予報で「波浪警報」や「高潮警報」が出たことを聞いたことがあるけど、津波と何が違うの?
台風が接近している時に天気予報で「波浪警報」や「高潮警報」というのを聞いたことがある方は多いんではないでしょうか。波浪や高潮も沿岸に波が押し寄せる現象ですが、津波とはメカニズムが全く異なります。
津波は先述のように地震等で海面が押し上げられて波高が高くなった状態です。
それに対し、波浪は強い風によって発生する周期の短い波動で、海面付近の波が押し寄せてくる現象です。波浪により船の座礁や転覆、護岸の決壊が起きることがあります。
高潮は台風や発達した低気圧が通過するときに潮位が大きく上昇する現象です。台風などによる気圧低下での吸い上げ効果と、沖から海岸に吹く風による吹寄せ効果により海面が上昇し、高潮が発生します。また、満潮時刻と高潮が重なることにより潮位はさらに高くなり危険が増します。2018年の台風21号による高潮で関西国際空港が浸水し大きな被害がでたことを記憶されている方も多いのではないでしょうか。
まとめ
この記事をまとめます。
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