日本の活火山(8) - 九州 -

日本の活火山(8) - 九州 - 火山噴火
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はじめに

世界には活火山が1500あると言われており、国別だと多い順にアメリカ(178)、ロシア(150)、インドネシア(140)、日本(111)、チリ(104)です。日本は4番目に多く、世界の約7%の火山があります。

かつては火山を「活火山」、「休火山」、「死火山」と分類していましたが、2003年に再定義され、活火山は「概ね過去1万年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山」と定義されました。

火山の分布図
日本の活火山の分布(出典:国土技術研究センター

この記事では日本の活火山をまとめます。

大分県の火山

鶴見岳・伽藍岳

鶴見岳
鶴見岳
伽藍岳 火口
伽藍岳 火口
伽藍岳 火口
伽藍岳 火口
伽藍岳 火口
伽藍岳 火口

鶴見岳(標高1375m)と伽藍岳がらんだけ(標高1045m)は別府市街地の西方に南北5kmにわたり連なっている溶岩ドームのそれぞれ南端、北端に位置します。鶴見岳には標高1300mのところまでロープウェイで行くことができ、そこから徒歩10分で山頂に行けます。また、冬には霧氷の銀世界になります。厚い溶岩流の累積からできており、山頂北側に噴気孔があります。伽藍岳はトロイデ型の活火山で硫黄山とも呼ばれています。伽藍岳の火口へは駐車場から徒歩5分程度で、噴気を見られます。中腹には塚原温泉があり、酸性度の高さとアルミニウムイオンの多さは日本第2位、鉄イオン含有量の多さは日本第1位です。これらの火山群の東麓には別府温泉があります。

過去1万年間では、約10500年前に鞍ヶ戸岳北方でマグマ噴火が、約7300年前に鍋山南西斜面で水蒸気噴火と、鶴見岳山頂付近でマグマ噴火が、約1900年前に鶴見岳山頂付近でマグマ噴火がありました。

有史以降の火山活動は次のとおりです。

・771年  水蒸気噴火(伽藍岳から噴火)
・867年  水蒸気噴火(伽藍岳から噴火)
・1949年  噴気(鶴見岳山頂の北西約500mで高さ約10mの白色噴気。噴気温度:95℃)
・1974~1975年  噴気(1949年と同じ場所から高さ約100~150mの噴気)
・1995年  泥火山形成、噴気(伽藍岳で泥火山(火口の長径約10m、短径約7m、深さ約4mの楕円状)の形成)
・1999年  地震
・2011年  地震
・2022年  地震増加

常時観測火山のひとつです。

由布岳

由布岳
由布岳

由布岳は由布院温泉の背後に聳える標高1583mの火山で「豊後富士」とも呼ばれています。東峰と西峰の2つの峰があり、最高点は西峰です。火山体は主火山体(基底溶岩)、数個の溶岩ドームと山頂溶岩で構成されています。過去1万年間では約2200年前に規模の大きな噴火活動があり、山体崩壊が発生しました。その後、池代溶岩ドームが生成し、北東側から西側山麓に火砕流が流下しました。 そして、山頂溶岩が出現し、南麓などにも火砕流が流下しました。さらに、断続的に山頂でのブルカノ式噴火が続き、由布岳火山灰を降らせました。

有史以降の火山活動はありません。

九重山

九重山
九重山

九重山くじゅうさん(九重連山)は大分県九重町から竹田市北部にかけて東西15kmにわたって分布する20以上の火山群の総称で、最高峰は日本百名山のひとつの中岳(標高1791 m)で、九州本土の最高峰でもあります。5月下旬から6月上旬にかけて咲くミヤマキリシマが有名です。西部には久住山をはじめとする久住山系の山々が連なり、東部には大船山たいせんざんを中心とする大船山系の山々が並んでいます。火山の多くは急峻な溶岩ドームで、一部は成層火山です。星生山ほっしょうざんの北東側山腹には活発な噴気孔群があります。また、火山西部には八丁原や大岳等の地熱発電所があります。過去1万年間では、立中山、大船山、段原火口、米窪火口、黒岳でマグマ噴火がありました。

有史以降の火山活動は次のとおりです。

・1662年  噴気
・1675年  噴気または溶融硫黄流出
・1738年  水蒸気噴火
・1995年  噴火(星生山東山腹で噴火。熊本で降灰)
・1996年1月  噴火
・1996年3月  噴煙・地震・火山性微動
・1997年  地震・火山性微動
・2011年  地震

常時観測火山のひとつです。

熊本県の火山

阿蘇山

阿蘇山 五岳
阿蘇山 五岳
阿蘇山 噴火
阿蘇山 噴火
阿蘇山 米塚
阿蘇山 米塚

阿蘇火山は世界最大級の阿蘇カルデラ(東西18km、南北25km、周囲約100km)と、カルデラ内の中央火口丘群(中岳、高岳、烏帽子岳など)、および、外輪山とその外側のなだらかな火砕流台地で構成されています。約27万年前に活動が始まり(Aso-1火砕流)、約14万年前(Aso-2火砕流)と約12万年前(Aso-3火砕流)にカルデラや中央火口丘を形成し、約9万年前(Aso-4火砕流)に広大な火砕流台地ができました。そして、巨大噴火により地下のマグマだまりが空洞となったため地盤が陥没し、カルデラが形成されました。中央火口丘群のうち、中岳(玄武岩~安山岩質の成層火山)が有史以降も噴火を繰り返しています。 中岳の火口は数個の火口が南北に連なる長径1100mの複合火口で、近年は北端の第1火口のみが活動しています。また、カルデラ内には温泉や地獄(噴気地帯)があります。

過去1万年間の火山と噴出物は、蛇ノ尾スコリア丘、赤水溶岩、杵島岳きしまだけ(約4000年前)、 往生岳(約3600年前)、米塚(約3300年前)と中岳などがあります。

有史以降の火山活動は次のとおりです。

・553年  噴火
・864年  噴火
・867年  噴火
・1239年  噴火
・1240年  噴火
・1265年  噴火
・1269年  噴火
・1271年  噴火
・1272年  噴火
・1273年  噴火
・1274年  噴火
・1281年  噴火
・1286年  噴火
・1305年  噴火
・1324年  噴火
・1331~1333年  噴火
・1473~1474年  噴火
・1485年  噴火(噴石丘生成)
・1505年  噴火
・1506年  噴火
・1522年  噴火(噴石丘生成)
・1533年  噴火
・1542年  噴火
・1558~1559年  噴火(新火口生成)
・1562年  噴火
・1573年  噴火
・1574年  噴火
・1576年  噴火
・1582年  噴火
・1583年  噴火
・1584年  噴火(田畑荒廃)
・1587年  噴火(噴石丘生成)
・1592年  噴火(噴石丘生成)
・1598年  噴火
・1611年  噴火
・1612年  噴火
・1613年  噴火(噴石、降灰)
・1620年  噴火
・1631年  噴火
・1637年  噴火
・1649年  噴火
・1668年  鳴動、噴火
・1675年  噴火
・1683年  噴火
・1691年  噴火
・1709年  噴火(噴石)
・1765年  噴火
・1772~1780年  噴火(降灰のため農作物に被害)
・1781~1788年  噴火
・1804年  噴火
・1806年  噴火
・1814年  噴火
・1815年  噴火(降灰多量、噴石、田畑荒廃)
・1816年  噴火(噴石で1人死亡)
・1826年  噴火(噴石、降灰多量)
・1827年  噴火(降灰多量、原野荒廃)
・1828年1月  噴火(新火口生成)
・1828年6月  噴火(降灰砂多量、田畑被害)
・1830年  噴火
・1831年  噴火
・1832年  噴火
・1835年  噴火
・1837年  噴火
・1838年  噴火(降灰)
・1854年  噴火(参拝者3人死亡)
・1856年  噴火(降灰)
・1872年  噴火(硫黄採掘者が数人死亡)
・1873年  噴火(降灰)
・1874年  噴火
・1884年  噴火(新火口生成)
・1894年  噴火(第1・第2火口で噴火)
・1897年  噴火(鳴動、降灰)
・1906年  噴火(千里が浜で噴火)
・1907年  噴火(降灰)
・1908年  噴火(鳴動、噴煙多量、降灰)
・1910年  噴火(鳴動、噴煙)
・1911~1912年  噴火(降灰)
・1916年  噴火(鳴動、降灰)
・1918年  噴火(鳴動、降灰)
・1919年  噴火(鳴動、降灰)
・1920年  噴火
・1923年  噴火(鳴動、噴石)
・1926年  噴火(降灰)
・1927年  噴火(降灰のため農作物被害)
・1928年  噴火(降灰)
・1929年  噴火(第2火口に新火孔生成)
・1930年  噴火(噴石、降灰)
・1932年  噴火(火口付近で負傷者13名)
・1933年  噴火(第1、2火口で噴煙、噴石、鳴動)
・1934年  噴火(第1火口で噴火)
・1935年  噴火(降灰、噴石)
・1936年  噴火
・1937年  噴火
・1939年  噴火
・1940年  噴火(降灰多量、農作物に被害)
・1941年  噴火(第1火口に新火孔生成)
・1942年  噴火
・1943年  噴火(第1火口に新火孔生成)
・1944年  噴火
・1945年  噴火
・1946年  噴火(降灰多量)
・1947年  噴火(降灰砂多量、農作物、牛馬被害)
・1948年  噴火(噴石、降灰)
・1949年  噴火(降灰多量)
・1950年  噴火(噴石、降灰)
・1951年  噴火(降灰)
・1953年  噴火(第1火口で噴火し、人身大~人頭大の噴石を数百mの高さに上げ、噴石は火口縁の南西方600mに達する。観光客の死者が6人、負傷者が90余人)
・1954年  噴火
・1955年  噴火
・1956年  噴火
・1957年  噴火(第1火口内に新火孔生成)
・1958年  噴火(第1火口が突然噴火し、死者が12人、負傷者が28人、建築物に被害)
・1959年  噴火(第1火口に新火孔生成)
・1960年  噴火
・1961年  噴火(新火孔生成)
・1962年  噴火(新火孔生成)
・1963年  噴火
・1964年  噴火(第1火口に新火孔生成)
・1965年  噴火(噴石は多量で建築物に被害)
・1966~1968年  噴火
・1969~1973年  噴火(第1火口に新火孔生成)
・1974年  噴火(第1火口に新火孔生成)
・1975年  噴火
・1976年  噴火
・1977年  噴火
・1978年  噴火
・1979年  噴火(楢尾岳周辺で死者が3人、重傷者が2人、軽傷者が9人、火口東駅舎被害)
・1980年  噴火
・1981年  土砂噴出
・1983年  土砂噴出
・1984年  噴火(第1火口に新火孔生成)
・1985年  噴火(第1火口に新火孔生成)
・1986年  土砂噴出・鳴動
・1987年  土砂噴出・鳴動
・1988年  噴火
・1989年  噴火(第1火口に新火孔生成)
・1990年  噴火(第1火口に新火孔生成)
・1991年  噴火
・1992年  噴火(2500mの噴煙。新火孔生成)
・1993年  噴火(スコリア噴火)
・1994年  噴火
・1995年  噴火
・1996年  土砂噴出、赤熱現象
・1997~1999年  土砂噴出、噴湯現象
・2000年  赤熱現象
・2001~2002年  赤熱現象
・2003年  噴火
・2004年  噴火
・2005年  噴火
・2006年  土砂噴出
・2007年  赤熱現象
・2008年  赤熱現象・火炎現象
・2009年  噴火
・2009~2010年  連続微動、孤立型微動
・2011年3月  地震
・2011年5月〜6月  噴火
・2013年  地震、火山性微動、赤熱現象、火山ガス、地殻変動
・2014年  噴火、火山性微動、赤熱現象、火炎現象、火山ガス、地殻変動(ストロンボリ式噴火)
・2015年  噴火、火映現象、火炎現象(ストロンボリ式噴火)
・2016年  噴火、火映現象
・2019年  噴火、火映現象、赤熱現象、噴湯現象、土砂噴出(中岳第一火口で噴火)
・2020年  噴火、火映現象、火炎現象(中岳第一火口で噴火)
・2021年  噴火、火砕流、火炎現象、火映現象、大きな噴石(噴煙は最高で火口縁上 3500m)
・2022~2024年  火映現象、土砂噴出、噴湯現象

火山災害は次のとおりです。

・1772~1780年  降灰による農作物の被害
・1815年  降灰多量、噴石により田畑荒廃
・1816年7月  噴石により死者が1人
・1828年6月  降灰砂多量で田畑被害
・1854年2月  噴火により参拝者3人が死亡
・1872年12月  噴火により硫黄採掘者が数人死亡
・1932年12月  噴火により火口付近で負傷者が13人
・1940年4月  噴火により負傷者が1人
・1953年4月  噴火により観光客6人が死亡、負傷者が90余人
・1958年6月  噴火により死者が12名、負傷者が28名、建築物に被害
・1965年10月  噴石により建築物に被害
・1979年9月  爆発により楢尾岳周辺で死者が3人、重傷者が2人、軽傷者が9人、火口東駅舎に被害
・1997年11月  火口縁で火山ガス(二酸化硫黄)により観光客2人が死亡

常時観測火山のひとつです。

長崎県の火山

雲仙岳

雲仙岳
雲仙岳
雲仙岳
雲仙岳の火砕流(出典:雲仙砂防管理センターホームページ
雲仙岳
雲仙岳の火砕流(出典:雲仙砂防管理センターホームページ

雲仙岳は島原半島の中央部に位置する活火山で、妙見岳、国見岳、普賢岳など三峰五岳から成る火山群の総称です。最高峰は1990年以降の火山活動でできた溶岩ドームである平成新山(標高1483m)で、主峰は普賢岳(標高1359m)です。

雲仙岳は1792年の「島原大変肥後迷惑」と呼ばれる噴火では約1万5千人を超える死者を出し、1990年11月から1996年6月まで続いた噴火では死者が41人、行方不明者が3人、負傷者が12人、建物の被害が2511軒と大きな被害をもたらした火山でもあります。

過去1万年間では、約4700年前に普賢岳、風穴、島ノ峰でマグマ噴火で火砕流は発生し、眉山がマグマ噴火で火砕流は発生しました。

有史以降の火山活動は次のとおりです。

・1663年  マグマ噴火(普賢岳の北北東900mの飯洞岩から噴火)
・1792年  マグマ噴火(2月に地獄跡火口から噴火。5月に強い地震と同時に眉山が大崩壊し、有明海に流れ込み津波が発生。 これにより島原、対岸の肥後・天草に被害があり、死者が約15000人)
・1798年  噴煙
・1922年  地震(地割れ、噴砂、山崩れが発生し、死者が27人、家屋倒壊が約600軒)
・1929年  地震
・1934年  地震
・1935年  地震
・1940年  地震
・1951年  地震
・1954年  地震
・1958年  地震
・1959年  地震
・1962年  地震
・1966年  地震
・1968年3月  地震
・1968年8月  土砂噴出(雲仙温泉の八幡地獄で約10mの高さの土砂が噴出)  
・1969年  地震
・1970年  地震
・1971年  地震
・1972年  地震
・1973年  地震
・1974年  地震
・1975年5月  地震
・1976年10月  噴気
・1977年  地震
・1978年  地震
・1979年  地震
・1980年  地震
・1981年  地震
・1982年  地震
・1983年  地震
・1984年  地震
・1985年  地震
・1988年  地震
・1989年  地震
・1990年  水蒸気噴火(地獄跡火口と九十九島火口で噴火)
・1991年  マグマ噴火(2月12日に屏風岩火口で噴火。3~5月地獄跡火口と屏風岩火口で頻繁に小噴火。 5月20日地獄跡火口に溶岩ドームが出現。24日に火砕流開始。 6月3日に火砕流災害(死者不明者が43人、建物179棟が被害)。 6月8日に火砕流災害(建物207棟)。 9月15日火砕流災害(建物218棟)
・1992年  マグマ噴火(溶岩ドームの成長・崩落・火砕流発生。8月8日に火砕流災害(建物17棟))
・1993年  マグマ噴火(溶岩ドームの成長・崩落・火砕流発生。6月23~24日に火砕流災害(死者1人、建物187棟))
・1994年  マグマ噴火(溶岩ドームの成長・崩落・火砕流発生)
・1995年  マグマ噴火(溶岩ドームの変化がなくなる)
・1996年  マグマ噴火(2月と5月に火砕流が発生)
・1997年  火山性微動
・1998年  火山性微動
・1999年  火山性微動
・2000年  火山性微動
・2001年  地震、火山性微動
・2002年  火山性微動
・2003年  火山性微動
・2004年  火山性微動
・2005年  火山性微動
・2006年  火山性微動

火山災害は次のとおりです。

・1664年  土石流により十九島池より出水し、死者が30余人
・1791年  地震により小浜で山崩れが発生し死者が2人
・1792年  眉山が大崩壊し、有明海に流れ込み津波が発生。これにより島原、対岸の肥後・天草に被害が発生し、死者が約15000人
・1991年6月3日  火砕流により死者不明者が43人、建物179棟に被害
・1991年6月8日  火砕流により建物207棟に被害
・1991年9月15日  火砕流により建物218棟に被害
・1992年8月8日  火砕流により建物17棟に被害
・1993年6月23~24日  火砕流により死者が1人、建物187棟に被害
・1991~1993年  土石流により建物1692棟に被害

常時観測火山のひとつです。

福江火山群

鬼岳(Photo by (c)Tomo.Yun

福江火山群は鬼岳、火ノ岳、城岳、黒島、黄島、赤島などの単成多数の火山で構成しており、2003年1月の活火山見直しで新たに活火山として認定されました。最新の活動は2000~3000年前でマグマ噴火でした。

有史以降の火山活動はありません。

まとめ

この記事をまとめます。

  • 大分県の活火山には、鶴見岳・伽藍岳、由布岳、九重山があります
  • 熊本県の活火山には、阿蘇山があります
  • 長崎県の活火山には、雲仙岳、福江火山群があります
  • 有史以降で噴火があったのは、鶴見岳・伽藍岳、九重山、阿蘇山、雲仙岳です
  • 阿蘇山、雲仙岳では火山災害がありました

この記事は下記を参考にして作成しました。

気象庁 活火山総覧 第4版
気象庁ホームページ
阿蘇火山博物館ホームページ

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